思い出とともに 愛と風、100円のレコードに秘められた恋の痕跡。それは70年代のメロディーだった。
神戸三宮の高架下商店街(ピアザ神戸)を歩き、元町近くの中古雑貨屋で、狙い目の中古レコードを発見した。専門知識のない店主が100円で売っていたのは、BUZZの「愛と風のように」(1972年、ケンとメリーのスカイラインCMソング)のシングル盤だ。「買わずに後悔よりも買って後悔」**の鉄則に従い、即座に購入した。晩御飯に予約していた、ハワイアンテイストの裏通りの小さな店で、ロコモコを待つ間にレコードを広げる。紙ジャケットに写る犬がボルゾイだと分かり、子どもの頃の飼い犬との思い出が蘇る。しかし、最も興味を引いたのは、レコードを入れる紙袋だった。そこには**「れいこ&けんいち」**と手書きの名前が。さらに、その名前の上に、別人の筆跡、別の色のインクで、グジャグジャと曲線で消し跡が付けられていた。たった100円の中古レコードは、70年代のメロディだけでなく、「れいこ」と「けんいち」の間に存在した時間と関係性、そして別れを示唆する、淡いラブストーリーの痕跡を、私に語りかけてきたのだった。
